「ありがとう、名取さん。助かるよ」

 「いえ」



 中でも、柊とのやりとりが圧倒的に多かった。中途入社ながらすでに会社にもチームにも馴染んだ柊が実務を動かしていて、プロジェクトリーダーをはじめメンバーから一目置かれている。

 全体の補佐的ポジションにいるわたしは、手と足を動かす彼の右腕のようになっていた。これが大手コンサル出身か、といつも惚れ惚れするし、彼の仕事が最大限上手くいくよう集中を続けた一ヶ月だった。



 「来週の中間報告会もよろしくお願いします」


 「はい、こちらこそ。名取さんのサポートがあれば余裕ですよ」


 「そんなことないです。日永くんのお力ですよ。そして褒めても何も出ませんからね」


 「はは、それは残念」



 営業推進部のフロアでも一際目立つ柊。そのくらいならチャットやメールでいいのに、ということも直接伝えにくるのだ。けれどそれが落ち込む心を引き上げてくれるから、ありがたかった。


 あくまでただの同僚のふりを続ける。……だけれどたまに、いつもの柊を見せてくることがある。


 「……あと」