「お疲れー、日永」

 「お疲れ様です、須和さん」


 昼休憩の残り10分。喫煙室でばったり会ったのは一次面接で話をした営業部の須和さんだった。おそらく40前後、営業部、ファイナンス営業課長の彼は俺をいたく気に入ってくれた。

 煙草の火をつけようとすれば、困ったように眉を下げて「いいよ。そういうのこの会社ではしなくていい」と柔らかな笑みが向けられた。


 「もうすでにいくつか案件抱えてくれてるらしいな、頼もしいよ。面接した俺の株も上がる」

 「それは何よりです。ありがとうございます」

 「もう慣れたか……って、この質問は野暮か」

 「はい、おかげさまで。定時帰りが本当に叶うなんて思ってませんでした」

 「あー……まあな」


 調子よく話していた須和さんが突然歯切れを悪くした。一瞬揺らいだ彼へ、少しの好奇心が俺を誘う。予測を放つ。