「変えて、なかったの」
こぼれ落ちるひとりごと、いつもと同じく反応はない。
メッセージアプリのアカウント。連絡することもできなければ、ブロックもできなかったもの。思い出にすらできなかったのだ。
どき、と少しだけ胸が鳴る。
……いや、でも。なぜ? いまさら何? 昼もあんなふうに言われたのに、結局ときめく自分が憎い。
《柊、待ってるから》
これはあの日、わたしが最後に送ったメッセージ。既読だけが虚しく灯って、返信はなかったものだ。
トーク履歴すら消せなかった。前回の日付は約8年前。
《待ってる》
これは、さっき。ほんの数秒前に受信したメッセージ。あの日、待ってもこなかったのは柊のほうなのに、ずるい。



