2階にあるカフェに立ち寄ってみた。初めて1人で入るカフェ。
うーん、大人じゃん……私。
さっきのお兄さんのナンパを皮切りに、道いく度に男の人に声をかけられていた。正直、その状況に疲れたのだ。
運良く、一席だけ空いていた窓側の席。私は席に座り、スマホを取り出した。
————————————
いいな大阪! 楽しんできてね!!
お土産はお気遣いなく!
————————————
昨晩、やっと届いた琴音からの返信。
やっぱり感じる、琴音との距離……
どこで、琴音とこんなことになっちゃったんだろう?
私が玲央くんたちとの、勉強会に誘った時?
あの会には、私も行かない方が良かったの?
あの時の私、一体どうするのが正解だったんだろう……
暗い顔でスマホを眺めていると、注文したカフェラテが席に運ばれてきた。
うそ——
ラ……ラテアートってやつ!? めちゃくちゃオシャレなんだけど!!
コーヒーの上に、ミルクで描かれた葉っぱのような模様。まさか、中学生のうちにこれを注文しちゃうなんて、夢にも思っていなかった。
喜びを噛み締めながら、ラテアートをスマホに収める。流石にラテアートとの自撮りはお上りさんみたいなので、やめておくことにした。
ミナミの街を見下ろすと、多くの若い女性が男性に声をかけられていた。
私がカワイクなりすぎてナンパされたのかと思ったけど、それは思い過ごしだったのかもしれない。
あれ、あの人——?
女性に声をかけている男性の1人に、グリコサインの前で写真を撮ってくれた人がいた。
***
「お姉さん、ちょっといいですか——?」
ナンパも何度か続くと無視するようになっていたが、今回はその声に振り返った。
「ちょっとお話と、よろしかったら撮影もさせて頂けると嬉しいんですけど」
声をかけてくれたのが、女性だったからだ。
「集英館で編集やってる、田崎と申します。で、こっちがカメラマンの角田です」
そう言って、田崎という女性は私に名刺を渡してきた。『Snaps!(スナップス!)』という、ストリートスナップを掲載するWebサービスをやっているらしい。昔は紙の雑誌もあったようだ。
「次回号はですね、“ファストファッションを着こなす女性!”という特集がございまして、それでお姉さんに声をかけさせていただいたんです。——失礼ですが、お名前はなんてお呼びしたらよろしいでしょうか。ニックネームでも何でも大丈夫ですよ」
「し……志帆です。アルファベットでもいいですか……?」
「もちろんです! SHIHOさんですね、素敵なお名前ですね!」
そして少しの会話を交わした後、私の撮影が始まった。
角田さんがカメラを構え、田崎さんが白いボードを私の顔に向ける。
なっ……なんか、撮影が本格的!? 田崎さんが持ってるのは、レフ板ってやつ? 確か、モデルさんの雑誌でみたことがある。
通りすがる人の中には、立ち止まって撮影を見ている人もいる。なんだか、少しだけ芸能人になったような気分になった。
「ありがとうございます、撮影終わりました! SHIHOさん、お顔がおキレイなだけじゃなく、背も高いしスタイルもいいし。その上、ヘアスタイルもバッチリですよね。——もしかして、モデルさんとかされてるんですか?」
私は田崎さんの質問に、大げさに手を振って否定をした。モ……モデルさんだなんて、まさか!!
「そ、そんな、とんでもないです。私、まだ学生ですし……」
「大学生をやりながらモデルさんをされてる方なんてのも、結構いらっしゃいますよ。高校生でも、いらっしゃるくらいですから。——あ、そうだ。会社の別部署で、雑誌のモデル募集してるところがあるんですよ。興味があったら、繋いでみましょうか?」
田崎さんがそう言う後ろで、カメラマンの角田さんもウンウンと頷いている。
わ……私が雑誌モデル……?
信じていいの、この人たち……?
***
「えええっ!! まだ中2なの!?」
田崎さんと角田さんは、揃って声を上げた。こんなふうに驚かれたのは、今日だけで何度目だろうか。きっと、身長とヘアスタイルのせいだと思う。
「うわー……ビックリした。てっきり、大学生くらいだと思ってたから。それにしちゃ、かなりメイクがナチュラルだなとは、思ってたんだけど。——そんなヘアスタイルにして、学校で怒られないの?」
「今は夏休みなんで、なんて言われるか分からないですけど。まだ、お母さんたちもこの髪型見てないんです」
それを聞いた田崎さんたちは「そうなんだ!」と笑った。
「じゃ、ラインだけ交換しておくんで、保護者さんが問題ないようだったら、また連絡ください。——じゃ、勉強頑張ってね! あと、変な男に引っかかったらダメよ!」
私は田崎さんたちに手を振り、その場をあとにした。
うーん、大人じゃん……私。
さっきのお兄さんのナンパを皮切りに、道いく度に男の人に声をかけられていた。正直、その状況に疲れたのだ。
運良く、一席だけ空いていた窓側の席。私は席に座り、スマホを取り出した。
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いいな大阪! 楽しんできてね!!
お土産はお気遣いなく!
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昨晩、やっと届いた琴音からの返信。
やっぱり感じる、琴音との距離……
どこで、琴音とこんなことになっちゃったんだろう?
私が玲央くんたちとの、勉強会に誘った時?
あの会には、私も行かない方が良かったの?
あの時の私、一体どうするのが正解だったんだろう……
暗い顔でスマホを眺めていると、注文したカフェラテが席に運ばれてきた。
うそ——
ラ……ラテアートってやつ!? めちゃくちゃオシャレなんだけど!!
コーヒーの上に、ミルクで描かれた葉っぱのような模様。まさか、中学生のうちにこれを注文しちゃうなんて、夢にも思っていなかった。
喜びを噛み締めながら、ラテアートをスマホに収める。流石にラテアートとの自撮りはお上りさんみたいなので、やめておくことにした。
ミナミの街を見下ろすと、多くの若い女性が男性に声をかけられていた。
私がカワイクなりすぎてナンパされたのかと思ったけど、それは思い過ごしだったのかもしれない。
あれ、あの人——?
女性に声をかけている男性の1人に、グリコサインの前で写真を撮ってくれた人がいた。
***
「お姉さん、ちょっといいですか——?」
ナンパも何度か続くと無視するようになっていたが、今回はその声に振り返った。
「ちょっとお話と、よろしかったら撮影もさせて頂けると嬉しいんですけど」
声をかけてくれたのが、女性だったからだ。
「集英館で編集やってる、田崎と申します。で、こっちがカメラマンの角田です」
そう言って、田崎という女性は私に名刺を渡してきた。『Snaps!(スナップス!)』という、ストリートスナップを掲載するWebサービスをやっているらしい。昔は紙の雑誌もあったようだ。
「次回号はですね、“ファストファッションを着こなす女性!”という特集がございまして、それでお姉さんに声をかけさせていただいたんです。——失礼ですが、お名前はなんてお呼びしたらよろしいでしょうか。ニックネームでも何でも大丈夫ですよ」
「し……志帆です。アルファベットでもいいですか……?」
「もちろんです! SHIHOさんですね、素敵なお名前ですね!」
そして少しの会話を交わした後、私の撮影が始まった。
角田さんがカメラを構え、田崎さんが白いボードを私の顔に向ける。
なっ……なんか、撮影が本格的!? 田崎さんが持ってるのは、レフ板ってやつ? 確か、モデルさんの雑誌でみたことがある。
通りすがる人の中には、立ち止まって撮影を見ている人もいる。なんだか、少しだけ芸能人になったような気分になった。
「ありがとうございます、撮影終わりました! SHIHOさん、お顔がおキレイなだけじゃなく、背も高いしスタイルもいいし。その上、ヘアスタイルもバッチリですよね。——もしかして、モデルさんとかされてるんですか?」
私は田崎さんの質問に、大げさに手を振って否定をした。モ……モデルさんだなんて、まさか!!
「そ、そんな、とんでもないです。私、まだ学生ですし……」
「大学生をやりながらモデルさんをされてる方なんてのも、結構いらっしゃいますよ。高校生でも、いらっしゃるくらいですから。——あ、そうだ。会社の別部署で、雑誌のモデル募集してるところがあるんですよ。興味があったら、繋いでみましょうか?」
田崎さんがそう言う後ろで、カメラマンの角田さんもウンウンと頷いている。
わ……私が雑誌モデル……?
信じていいの、この人たち……?
***
「えええっ!! まだ中2なの!?」
田崎さんと角田さんは、揃って声を上げた。こんなふうに驚かれたのは、今日だけで何度目だろうか。きっと、身長とヘアスタイルのせいだと思う。
「うわー……ビックリした。てっきり、大学生くらいだと思ってたから。それにしちゃ、かなりメイクがナチュラルだなとは、思ってたんだけど。——そんなヘアスタイルにして、学校で怒られないの?」
「今は夏休みなんで、なんて言われるか分からないですけど。まだ、お母さんたちもこの髪型見てないんです」
それを聞いた田崎さんたちは「そうなんだ!」と笑った。
「じゃ、ラインだけ交換しておくんで、保護者さんが問題ないようだったら、また連絡ください。——じゃ、勉強頑張ってね! あと、変な男に引っかかったらダメよ!」
私は田崎さんたちに手を振り、その場をあとにした。



