「そこ! 私語は慎みなさい!」
そう注意されたのは、桐島くんと姫川さん。
彼らはペロッと舌を出して、肩をすくめた。彼らはクラスイチ、いや学年イチと言っていい、イケてる陽キャグループのうち2人。
めちゃくちゃルックスが良いだけでなく、とてもオシャレだ。
私、相川志帆は、そんな二人を見てため息をついた。
はあ……私のいいところって、なんだろう……
169センチの身長? でもそれに比例して、横幅も立派なんだよね……たまに褒められるとしたら、クリクリっとした目くらい……?
と、そんな事を考えている間に、チャイムが鳴ってしまった。
あー……また授業が上の空になっちゃった。来年には、受験勉強に取り組まなきゃいけないっていうのに……
「ねえねえ、志帆。昨日のYo!Tubeライブの話だけどさ!」
休み時間に入り、私の席までやってきたのは、親友の白石琴音。色白で小柄な彼女には、守ってあげたくなるような愛らしさがある。少しだけぽっちゃりとしているのも、彼女の優しいキャラクターにとても合っていた。
そうそう。私たちには、共通のお気に入りYo!Tuber『量産型サブカルズ』がいる。琴音は昨晩のラインだけじゃ、まだまだ話したりなかったようだ。
私は琴音との、この時間が大好きだ。気を使うことも、緊張することもなく、心の底からリラックスして話せる大切な時間。
だけど……
つい、琴音のその向こう側に見える、桐島くんたちのグループに目が行ってしまう。
揃いも揃ってカッコよく、カワイイ彼ら。そこだけ切り取ると、まるで学園ドラマのイチシーンを見ているよう。
私が逆立ちしても、きっと入ることの出来ないグループ。なんか不公平だよね、同じ人間に生まれてきたっていうのに——
「——ねえ志帆、話聞いてる!?」
「あ、ああ……えーと、時雨くんのことだよね!?」
私の答えは間違っていたのか、琴音は「違う!」と言って、頬をプクッと膨らませてしまった。
***
夕食とお風呂をすませ、私はベッドで横になっている。
宿題そっちのけでスマホをスクロールさせては、SNSでオシャレ女子の画像を眺めているのだ。
「キレイなお姉さんたち……数年後、私はどうなってるんだろ……」
そんな思いでスマホを見つめていると、突然画面が真っ暗になった。そこから浮かび上がってきたのは、「Now Installing...」の文字。
なっ、何かのアプリが、勝手にインストールされてる!?
「ちょっ、なになにっ! 私、何もへんなとこタップしてないんだけど!?」
慌てて電源を落とそうとするも、「Now Installing...」の表示は消えない。そしてしばらくすると、初めて見るアプリが立ち上がってきた。
『アバター★ミー:Avatar Me』
「ア、アバター★ミー……? こんなアプリ、見たことも聞いたこともないんだけど……」
すぐにこのアプリを消さなきゃと思ったものの、ポップなロゴと鮮やかなピンクの画面に誘われ、〘 次へ 〙のボタンをタップしてしまった。
————————————
『アバター★ミー』へようこそ!
このアプリは、あなたのスペックをカンタンにあげることの出来る、超絶神アプリ!! 使い方はカンタン、0〜100までの数値を、あなたがアップしたい部分に割り当てるだけ!
アップ出来るのは、【ルックス】【運動神経】【頭の良さ】の3項目! もちろん、広告表示なしの完全無料!!
明日からのあなたを、キラキラに変えちゃう『アバター★ミー』!
まずは無料体験から!!
〘 無料体験してみる 〙
————————————
なっ、なんなの、この胡散臭いアプリ……?
勝手にインストールしてくるなんて、ろくでもないアプリに決まってんじゃん……
だっ、だけど……
私は3項目の中の、【ルックス】から目が離せなかった。
ど、どうせ、私の画像をちょこちょこっと加工するだけの、つまらないアプリに決まってる……
そんな風に思いながらも、私は〘 無料体験してみる 〙のボタンをタップしていた。
ルックス:0●——————100 [ 0]
運動神経:0●——————100 [ 0]
頭の良さ:0●——————100 [ 0]
〘 決定する 〙
起動すると、こんな画面に切り替わった。丸いボタンを右にスライドしていくと、カッコ内の数字が増えていく。例えば、ルックスを右端まで持っていくとこんな感じ。
ルックス:0——————●100 [100]
運動神経:0●——————100 [ 0]
頭の良さ:0●——————100 [ 0]
〘 決定する 〙
次に運動神経の丸いボタンをスライドしようと思ったけど動かない。ああ……3つ合わせて100がマックスなのか。
例えば、ルックス50、運動神経25、頭の良さ25なら、振り分けることが出来るみたい。そして私は、ルックスを100にした状態で〘 決定する 〙をタップしてみた。
その瞬間、部屋着にしているジャージのウエスト部分がストンと下に落ちた。
うっ、うそ……?
やっ、痩せた……!?
私はジャージがずり落ちないよう、ウエスト部分を掴みながら慌てて鏡の前へいく。
そこにはモデル体型になっている、別人にしか見えない私が映っていた。
そう注意されたのは、桐島くんと姫川さん。
彼らはペロッと舌を出して、肩をすくめた。彼らはクラスイチ、いや学年イチと言っていい、イケてる陽キャグループのうち2人。
めちゃくちゃルックスが良いだけでなく、とてもオシャレだ。
私、相川志帆は、そんな二人を見てため息をついた。
はあ……私のいいところって、なんだろう……
169センチの身長? でもそれに比例して、横幅も立派なんだよね……たまに褒められるとしたら、クリクリっとした目くらい……?
と、そんな事を考えている間に、チャイムが鳴ってしまった。
あー……また授業が上の空になっちゃった。来年には、受験勉強に取り組まなきゃいけないっていうのに……
「ねえねえ、志帆。昨日のYo!Tubeライブの話だけどさ!」
休み時間に入り、私の席までやってきたのは、親友の白石琴音。色白で小柄な彼女には、守ってあげたくなるような愛らしさがある。少しだけぽっちゃりとしているのも、彼女の優しいキャラクターにとても合っていた。
そうそう。私たちには、共通のお気に入りYo!Tuber『量産型サブカルズ』がいる。琴音は昨晩のラインだけじゃ、まだまだ話したりなかったようだ。
私は琴音との、この時間が大好きだ。気を使うことも、緊張することもなく、心の底からリラックスして話せる大切な時間。
だけど……
つい、琴音のその向こう側に見える、桐島くんたちのグループに目が行ってしまう。
揃いも揃ってカッコよく、カワイイ彼ら。そこだけ切り取ると、まるで学園ドラマのイチシーンを見ているよう。
私が逆立ちしても、きっと入ることの出来ないグループ。なんか不公平だよね、同じ人間に生まれてきたっていうのに——
「——ねえ志帆、話聞いてる!?」
「あ、ああ……えーと、時雨くんのことだよね!?」
私の答えは間違っていたのか、琴音は「違う!」と言って、頬をプクッと膨らませてしまった。
***
夕食とお風呂をすませ、私はベッドで横になっている。
宿題そっちのけでスマホをスクロールさせては、SNSでオシャレ女子の画像を眺めているのだ。
「キレイなお姉さんたち……数年後、私はどうなってるんだろ……」
そんな思いでスマホを見つめていると、突然画面が真っ暗になった。そこから浮かび上がってきたのは、「Now Installing...」の文字。
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そんな風に思いながらも、私は〘 無料体験してみる 〙のボタンをタップしていた。
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運動神経:0●——————100 [ 0]
頭の良さ:0●——————100 [ 0]
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起動すると、こんな画面に切り替わった。丸いボタンを右にスライドしていくと、カッコ内の数字が増えていく。例えば、ルックスを右端まで持っていくとこんな感じ。
ルックス:0——————●100 [100]
運動神経:0●——————100 [ 0]
頭の良さ:0●——————100 [ 0]
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例えば、ルックス50、運動神経25、頭の良さ25なら、振り分けることが出来るみたい。そして私は、ルックスを100にした状態で〘 決定する 〙をタップしてみた。
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うっ、うそ……?
やっ、痩せた……!?
私はジャージがずり落ちないよう、ウエスト部分を掴みながら慌てて鏡の前へいく。
そこにはモデル体型になっている、別人にしか見えない私が映っていた。



