『裏切り者』



勢いよく音を立てて、俺は日記から飛び退いた。

走った後のように息が乱れている。

俺の心臓の音に呼応するかのように、今まで大人しかったセミの声が辺りに響き渡った。

一筋の汗が額からアゴに流れ落ちてくる。

俺は逃げるように夏菜の部屋から出て行った。


夏菜は、誰に連れて行かれてしまったんだろうか。


肝試しなんて、行かなければよかった。


後悔は先にたたない。


あざ笑うかのようなセミの鳴き声が、やけに耳にこびりついていた。