ルーチェは慌てて立ち上がると、裾についた落ち葉や花弁を払い除けてから、ヴィルジールに向かって頭を下げた。
「いらっしゃるとは思わず、失礼をいたしました」
「それはこちらの台詞だ」
ヴィルジールは唇を横に引くと、ルーチェの目の前まで歩み寄った。彼女は木の下で読書をしていたのか、足元の本には栞が挟まれている。本のタイトルに目を流すと、魔法学や歴史に関する書物ばかりだ。
「調べ物をしていたのか?」
「はい。聖女の力について、何か分かることがあると良いのですが」
そう言って、本を拾い上げ、胸の前で大切そうに抱きしめるルーチェの瞳は、悲しげに揺れていた。
きっと、聖女でありながら、その力の使い方が分からずにいることに胸を痛めているのだろう。記憶を失っているのだから、それは致し方のないことであり、これからゆっくり取り戻していけばいいとヴィルジールは思っているのだが。
ルーチェは、そうではないようだ。
「……聖女か」
ヴィルジールは小さく吐くと、ルーチェの後ろに聳える大きな木の下に行き、そこに背を預けるようにして座り込んだ。
ルーチェが驚いたように目を見張っていたが、ヴィルジールは目を合わせずに瞼を下ろした。
「いらっしゃるとは思わず、失礼をいたしました」
「それはこちらの台詞だ」
ヴィルジールは唇を横に引くと、ルーチェの目の前まで歩み寄った。彼女は木の下で読書をしていたのか、足元の本には栞が挟まれている。本のタイトルに目を流すと、魔法学や歴史に関する書物ばかりだ。
「調べ物をしていたのか?」
「はい。聖女の力について、何か分かることがあると良いのですが」
そう言って、本を拾い上げ、胸の前で大切そうに抱きしめるルーチェの瞳は、悲しげに揺れていた。
きっと、聖女でありながら、その力の使い方が分からずにいることに胸を痛めているのだろう。記憶を失っているのだから、それは致し方のないことであり、これからゆっくり取り戻していけばいいとヴィルジールは思っているのだが。
ルーチェは、そうではないようだ。
「……聖女か」
ヴィルジールは小さく吐くと、ルーチェの後ろに聳える大きな木の下に行き、そこに背を預けるようにして座り込んだ。
ルーチェが驚いたように目を見張っていたが、ヴィルジールは目を合わせずに瞼を下ろした。


