亡国の聖女は氷帝に溺愛される

「私にお任せください。あの皇帝陛下を驚かせてみせます」

「お、驚かせる……?」

 椅子に座らされたルーチェは、張り切って動いているセルカを見ながら、今日の自分の服に目を落とした。とても綺麗な服だと思うが、これではいけないのだろうか、と。

 セルカは目にも止まらぬ速さで駆け回り、色々なワンピースを持ってくると、ルーチェに次々と当てがっていった。その中から納得のいくものを見つけたのか、上品な青いリボンが腰に掛けられているアイスグレーのワンピースを手に取ると、ルーチェに合わせながら満足そうに頷く。

「これに致しましょう。さあ、今お召しになっているものをお脱ぎください」

「セ、セルカさ……」

 ルーチェが衣服のボタンに手を掛けるよりも前に、すらりと伸びてきたセルカの手が次々と留め具を外していく。瞬く間に肌着姿にされたかと思えば、今度は新しいワンピースに袖を通された。

 そうして、ワンピースに合わせて選ばれた薄手のケープを羽織り、手には同色の帽子を持たされると、セルカは唇を綺麗に綻ばせた。

「では門までお送りいたします」

 何事もなかったかのようにセルカは部屋の扉を開けたが、この短時間でとても疲れた気がしてならないルーチェは、ゆっくりとした足取りでソレイユ宮を後にしたのだった。