亡国の聖女は氷帝に溺愛される



 ソレイユ宮で暮らし始めてから七日が経った頃。
 日課となりつつある、自室の窓際で読書をしていたルーチェの元に、一羽の鳥が舞い降りてきた。

 鳥はルーチェの両手ほどの大きさで、薄い空色の毛並みにつぶらな瞳をしていた。

「……あなたは?」

 鳥はルーチェの声に首を傾げるだけだ。だが何かを待っているのか、その場から動こうとしない。

 ルーチェは読みかけの本を閉じて、鳥と向き直った。何やら鳥の足首には紙が括り付けられている。それを取ってやると、鳥はもう用がないと言わんばかりに翼を羽ばたかせ、窓の外へと飛んでいった。

 鳥が運んできた手紙を開けると、見覚えのある字が短い文を綴っていた。

(──正午に迎えに行く。……って、そんな急に!)

 ルーチェは跳ねるように立ち上がり、その場であわあわと周囲を見回す。すると、絶好のタイミングでセルカが現れ、只事でない様子のルーチェを見て駆け寄ってきた。

「ルーチェ様? どうかされましたか」

「セルカさん……!どうしましょう」

「何があったのです」

 ルーチェは鳥が運んできた手紙をセルカに見せ、今の格好で出掛けても大丈夫かと尋ねる。

 セルカはルーチェを上から下まで眺めると、大きく頷くなりルーチェの手を取り、部屋の奥へと連れて行った。