式典の夜に密やかに行われたこの会は、ノエルの言葉を最後に幕が降りた。ノエルは客間へ、エヴァンとアスランは仕事の続きに、ヴィルジールは執務室へ。
ひとり残されたルーチェは、ほどなくして迎えに来てくれたセルカと共に、離宮へと向かって歩いていた。
これで、ルーチェの肩書きは確かなものとなり、亡くなったと思っていた聖王の生死に希望の光が差し込んだ。
自室に戻ったルーチェは、入浴後にひと息ついてからテラスに出た。満天の星空を眺めながら、ゆっくりと呼吸を繰り返す。
(──あなたは、どこにいるのですか)
命運を共にする聖女が生きているから、きっと生きているとノエルは言った。ならばこの同じ空の下、どこかで息をしているのだ。
ルーチェのように記憶を失い、彷徨っていたりしていないだろうか。手を差し伸べてくれた人はいるだろうか。震えるような想いをしていないだろうか。
声も顔もぬくもりも思い出せない人のことを想いながら、ルーチェは一雫の涙をこぼした。
胸に込み上がってくるこの想いに、名前を付けるとしたら。それは悔しさに似たもので、怒りや悲しみも混じっている。それでいて果てのない感情に振り回されているのだと実感した時、両の目からはただただ涙があふれていた。
ひとり残されたルーチェは、ほどなくして迎えに来てくれたセルカと共に、離宮へと向かって歩いていた。
これで、ルーチェの肩書きは確かなものとなり、亡くなったと思っていた聖王の生死に希望の光が差し込んだ。
自室に戻ったルーチェは、入浴後にひと息ついてからテラスに出た。満天の星空を眺めながら、ゆっくりと呼吸を繰り返す。
(──あなたは、どこにいるのですか)
命運を共にする聖女が生きているから、きっと生きているとノエルは言った。ならばこの同じ空の下、どこかで息をしているのだ。
ルーチェのように記憶を失い、彷徨っていたりしていないだろうか。手を差し伸べてくれた人はいるだろうか。震えるような想いをしていないだろうか。
声も顔もぬくもりも思い出せない人のことを想いながら、ルーチェは一雫の涙をこぼした。
胸に込み上がってくるこの想いに、名前を付けるとしたら。それは悔しさに似たもので、怒りや悲しみも混じっている。それでいて果てのない感情に振り回されているのだと実感した時、両の目からはただただ涙があふれていた。


