ダンスを最後に、式典は幕を閉じた。これから隣の会場で立食式のパーティーがあるようだが、ルーチェはヴィルジールとともにホールを抜け、城の奥へと向かっている。
「陛下は参加されないのですか?」
「当然だろう」
皇帝陛下の即位十年目を祝う会だというのに、主役が参加しないとは。同じことを思っていたのか、二人の先を歩くエヴァンが肩を落としていた。
「聖女様。陛下に何とか言ってやってください」
エヴァンは「うう」と泣き真似をしている。隣を歩くヴィルジールは興味がないとでも言いたげに、ため息を吐いていた。
ルーチェはヴィルジールを一瞥してから、エヴァンに向かって唇を開く。
「主役がいらっしゃらないのは寂しく思いますが、人に囲まれながら食事をするのは、落ち着きませんものね」
「ええ!聖女様ったら、陛下の肩を持たれるのですか!」
ルーチェは苦笑を飾った。そのつもりはなかったが、もしもルーチェがヴィルジールだったら、同じことを選んでいると思ったのだ。人に囲まれ、見られながら、上辺だけの付き合いをするなんて──きっと、息が詰まってしまう。
(……あれ、私……どうしてそう思ったのかしら)
突然足を止めたルーチェを、二人が不思議そうに見遣る。
「……ルーチェ」
ヴィルジールの声で、ルーチェは顔を上げた。何でもないと首を横に振り、口の端に笑みを滲ませる。
いつの間にか目的地に着いていたらしく、目の前には大きな青い扉があった。
「陛下は参加されないのですか?」
「当然だろう」
皇帝陛下の即位十年目を祝う会だというのに、主役が参加しないとは。同じことを思っていたのか、二人の先を歩くエヴァンが肩を落としていた。
「聖女様。陛下に何とか言ってやってください」
エヴァンは「うう」と泣き真似をしている。隣を歩くヴィルジールは興味がないとでも言いたげに、ため息を吐いていた。
ルーチェはヴィルジールを一瞥してから、エヴァンに向かって唇を開く。
「主役がいらっしゃらないのは寂しく思いますが、人に囲まれながら食事をするのは、落ち着きませんものね」
「ええ!聖女様ったら、陛下の肩を持たれるのですか!」
ルーチェは苦笑を飾った。そのつもりはなかったが、もしもルーチェがヴィルジールだったら、同じことを選んでいると思ったのだ。人に囲まれ、見られながら、上辺だけの付き合いをするなんて──きっと、息が詰まってしまう。
(……あれ、私……どうしてそう思ったのかしら)
突然足を止めたルーチェを、二人が不思議そうに見遣る。
「……ルーチェ」
ヴィルジールの声で、ルーチェは顔を上げた。何でもないと首を横に振り、口の端に笑みを滲ませる。
いつの間にか目的地に着いていたらしく、目の前には大きな青い扉があった。


