光を束ねたような髪が、風に揺られている。

「……生きて……生きていたんだね……」

 少年は碧色の大きな瞳から涙をこぼすと、ルーチェに駆け寄るなり強く抱きしめてきた。

「わ、わっ……!」

 突然のことに、ルーチェはどうしたらいいのか分からない。振り向いたらそこに居て、目が合ったかと思えば泣かれて、抱きつかれている。どうしたものだろうか。

「あ、あの……私を知っているんですか?」

 戸惑いながらも、一番知りたかったことを訊いてみると、少年がぱっと顔を上げた。濡れたその瞳は困惑したように揺れている。

「……もしかして、俺が分からない?」

「は、はい」

 ルーチェが頷くと、少年は慌てた様子でルーチェを放した。腕組みをしながらルーチェのことを上から下まで眺めると、今度は手元に口を当てている。

「私のことを知っているのですか?」

「知ってるよ。この世界で二番目に」

 まさかの返事に、ルーチェは目を真ん丸に見開いた。

 二番目ということは、ルーチェの知りたいことを全て知っているのではないだろうか。きっと、記憶のことも。

「……私の名前を、ご存知ですか?」

 ルーチェは右の手のひらを握りしめながら、震える声で問いかけた。