案内されたのは、清廉な造りの白い建物だった。まわりを囲うように水路が張り巡らされているのか、水が流れる音がする。木々がそよぐ音も聞こえ、なんだか耳が幸せだ。

 エヴァンは簡単に内部の説明をすると、笑顔で仕事に戻っていった。

 門を潜ると、深い青色の玄関扉が聳えていた。その手前にある二本の柱は、ヴィルジールと話をしたテラスで見た柵と同じデザインだ。

 セルカが扉を開けようと手を伸ばすと、見計らったかのような間合いで内側から扉が開かれる。

「──ようこそ。ルーチェ様」

 ふたりを出迎えたのは、優しそうな面立ちの老夫婦だった。その後ろにはルーチェと同じ年頃の男性が花開くように笑ってから、ぺこりと頭を下げてきた。

「お世話になります。ルーチェと申します」

 ルーチェは夫婦に会釈をしてから、男性にも一礼する。

 顔を上げると、メイド服を着ている初老の女性が、なんとも嬉しそうな笑顔で駆け寄ってきた。

「初めまして、ルーチェ様。私はイデル。こちらは夫のロイド、後ろにいるのは孫のアルドです」

「聖女様にお仕え出来るだなんて、長生きしていてよかったなぁ……」

 老夫婦──イデルとロイドは嬉しそうに頬を緩め、ルーチェを上から下まで見た後、顔を見合わせて笑った。