亡国の聖女は氷帝に溺愛される

 ほどなくして現れたのは、白い衣服を着ている男性だった。目を覚ました時に傍にいた女性が連れてきたのだろう。

 男性はベッドに横たわる少女へ手を翳すと、静かに目を閉じた。その瞬間、少女は全身が温かい風に包まれるような感覚がして、息をするように目を閉じていった。

「……何かとても大きな力を使ったのでしょうか。魔力が枯れています。傷を癒すことはできますが、これ以上のことは私には出来ません」

「魔力が枯れる、とは?」

「言葉の通りでございます。花のように、衰えて命が終わっているのです」

 萎れた花には水を与えれば再び咲くが、枯れた花に水を与えてもまた咲くことはない。男はそう語ると、少女に翳していた手を下ろした。

「目をお開けください」

 女性の声で、少女は目を開ける。
 女性は少女が身体を起こすのを手伝うと、ブランケットを肩に掛け、湯気が立つカップを差し出した。

 淡々とした口調なうえ、少しも笑わないので冷たい印象を受けるが、手つきは優しかった。

「ありがとう、ございます…」

「痛いところや、苦しいところはございませんか」

 少女は返事の代わりに頷くと、受け取ったカップを覗き込んだ。