亡国の聖女は氷帝に溺愛される



 目を醒ますと、記憶にない天井が飛び込んできた。白を基調としたそれには、蔦に似た模様が金色で描かれている。

 照明には無数の宝石が散りばめられている。窓から光が差し込んでいるので、その真の美しさを知れるのは日が暮れた後になるだろう。

 ゆっくりと身体を起こすとそこは、目を疑いたくなるほど豪華な部屋だった。家具から小物に至るまで全てが煌びやかで、目がチカチカしてくる。

 ふと、銀糸で紡いだような髪が視界に入った。指先で摘むと自分のものである感触がした。

(……ど、どういうこと?)

 少女はベットから這い出て、数歩先にあった大きな鏡を目指した。恐る恐る覗き込むと、そこには白銀色の髪の少女が映る。

 蜂蜜色だったはずの髪が、白銀色に変わっている。何故、一体どうして、と頭を抱えていると、部屋のドアが開けられる音がした。

「──目を覚まされたのですね」

 聞き覚えのある声に振り返ると、セルカが水差しを手に立っていた。

「セ、セルカさんっ……」

 少女は自分の髪を両手で掴みながら、縋るような想いでセルカを見る。

 セルカは目を真ん丸に見開いて驚いていたが、すぐに駆け寄ってきた。