亡国の聖女は氷帝に溺愛される

 神秘的な黄金の輝きが満ちていく。

 ある者の心に安らぎを、ある者の傷には癒しを。またある者には失われた身体に再生を。

 その光は初めにヴィルジールを包み込んだが、そこから国全土を覆うようにして広がり、光の粒子を降らせた。

 少女は目を開けたが、その光量は目を開けていられないほどに膨れ上がっていた。反射的に目を閉じても、目蓋の裏は焼き尽くされるほどに光り輝いている。

 その光の中で、少女はひとりの青年を視た。

 黄金色の長髪に、澄んだ碧色の瞳。神聖なローブを身に纏い、愛おしげに自分を見つめるその人を。

(────さま……)

 自分はその人を何と呼んだのか。彼もまた自分を何と呼んでいたのか。何も分からないまま、その世界は閉ざされていく。

 次に目を開けた時、少女の目の前には青い瞳を揺らす美しい顔があった。

「──髪が……」

(──髪?)

 髪がどうしたというのだろうか。確かめようにも、身体が鉛のように重く、動こうものなら全身に突き抜けるような痛みが走る。

 少女は視界がぐらりと傾くのを感じながら、ヴィルジールの腕の中に沈んだ。