亡国の聖女は氷帝に溺愛される

 アスランは剣を掲げた。

「全治癒師に告ぐ!何としてでも、皇帝陛下の命をお助けせよ!!」

 おそらく、白服の人たちが治癒師というものなのだろう。緑色のあたたかな光を纏う彼らは、肩で息をしながらヴィルジールに駆け寄ると、次々とその手を翳していった。

 だが、いつになっても、いくつになっても、その光はヴィルジールに届かず、傷口は塞がらない。

「な、何で治せないんだ!」

 焦るアスランに、治癒師たちは困惑している。

「わかりません……効かないのですっ……力が……」

「くそっ」

 アスランは傷を癒す力を持たないのか、悔しげに顔を歪めると、ヴィルジールの左手を握った。

「おい、ジル!俺を散々こき使っておいて、先に逝くなんて許さないからな!!」

「デューク卿……」

 ヴィルジールを包む光は大きくなるばかりだが、彼の傷はひとつも癒えず、血は流れ続けている。その頬が青白くなり、唇が紫色に変わっていることにいち早く気づいた少女は、治癒師たちを押し退けてヴィルジールの右手を握った。

 顔が真っ青だ。辛うじて息はあるようだが、もう長くは保たない。本能でそう感じた少女は、銀色の長い睫毛を見つめた。