初めは果ての見えない白い空間を見た。

 次の瞬間には、泣きたくなるくらいに温かくて優しい光を。

 ぶわりと全身の毛が逆立つのを感じて目を開けると、ルーチェを抱きしめているヴィルジールの身体が光り輝いていた。

「この光は──」

 ふたりを見守っていたノエルが、膨大な光に目を細める。その隣にいるファルシは一雫の涙を零し、胸に手を当てながら天を仰いだ。

「──聖者の光の力だ」

 何故それが、ヴィルジールの身体から放たれているのか。その答えは探さずとも、目の前にあった。

 空間全体を震わせるような光は、ルーチェの身体を包み込むと、そこから伸びていくように城の外へ、そして翼を広げるようにして大地へと降り注いでいく。


 どこまでも伸びていく光が世界に溶け込んだ頃。

 硬く目を閉ざしていたルーチェの身体からは、痛みも苦しみも消えてなくなっていた。

 ルーチェが目を開けると、洗い立てのような太陽の光を受けている銀髪が、きらきらと輝いていた。

 堪らなくなってその名を奏でると、彼は宝石のような青色の瞳から無色透明な雫を落としながら、唇を震わせた。

「──ルーチェ、俺の声が聞こえるか?」

 ルーチェはうなずいた。溢れ出る涙を拭いながら、何度も、何度も。

「……そうか。なら、よかった」

 ヴィルジールがルーチェの身体を強く抱きしめる。その時の表情を、ルーチェは生涯忘れることはないだろうと思った。