いつからだろうか。宝石のような青い瞳に見つめられると、鼓動が跳ねるように動いて。その大きな手で触れられると、肺がいっぱいになったような苦しさを感じるようになったのは。

 ルーチェは青色の瞳をまっすぐ見上げ、最大級の微笑みを飾った。

「その剣を、私にお返しください」

 渡してほしい、ではなく返してと言ったのは、ルーチェの一片の力となって消えたソレイユの想いが残っているからなのか、それとも本能から来たものなのか。

「あなたが愛するものを、わたしにも守らせてください」

 ルーチェは目を一度閉じ、決意を宿して開いた。

 ヴィルジールはきっと、この言葉の意味を理解している。ただ一度剣を振り下ろしただけで、彼の腕は色を変え動かなくなったのだ。この剣の使用者は代償を伴うのだと、彼は分かっている。

 ヴィルジールはルーチェの光によって癒された右手に目を落としてから、ルーチェの顔を見上げた。その青い瞳は強く揺れ、唇は震えている。

 ルーチェはまた微笑った。いつものように、彼の名を口遊んで、そうして右手を差し出す。

「──……約束の、剣だ」

 ヴィルジールは涙をこぼしながら、ルーチェの右手に聖女の剣を握らせた。

 太陽が昇るかのように、ルーチェの手から生まれた光が世界に満ちていく。

 ルーチェはヴィルジールの両目から落ちる水滴をただ見つめながら、まばゆい光の剣を手に立ち上がった。

 不思議と身体はもう、重くはなかった。