その光は、ヴィルジールの手を焼き尽くしてしまうのではと思うくらい、凄まじい熱気を帯びていた。

(──なんだ、これはッ……熱いっ……!)

 ヴィルジールは顔を顰めた。途轍もなく熱い何かが、ヴィルジールの右手に宿ったのだ。余りの熱さに膝を着きそうになっていると、今度は声が聞こえてきた。

 声の主は、聖女の剣を託された男のものだ。

『──王の子よ、約束を果たせ。私に愛するものを守る力をくれたあの美しい方に、この剣を』

 熱い光の中から、白銀の剣が現れる。菫色の石が嵌め込まれているその剣からは、強く澄んだ光が感じられる。

 光の中から現れた剣を、その剣をしっかりと握ったヴィルジールを、誰もが息を呑んで見つめていた。

 ヴィルジールは青いマントを翻し、迷いのない足取りで歩き出した。真紅の瞳を見開いている竜へと向かって、大きく剣を振り下ろす。託された剣は光の壁を斬り裂くと、そのまま氷の斬影となって竜の右腕に衝突した。

「(ぐあああああっっ!)」

 竜が叫び声を上げながら、巨大な体躯を揺らす。ヴィルジールの斬撃で斬り落とされた竜の右腕が、光を零しながら落ちていく。同時に、捕らわれていたルーチェも解放され、宙に投げ出された。

「ルーチェッ!!」

 ヴィルジールは勢いよく地を蹴って駆け出し、落ちてくるルーチェの身体を抱き止めると、蒼白い頬に手を添えた。