「……ルーチェ」
囁きかけるように呼んで、ヴィルジールは歩き出す。
この世の全てに拒絶しているかのような、分厚い光の壁の向こうにいる、ルーチェと竜の元へ向かって。
聖王ファルシにも大魔法使いのノエルにも敗れなかったこれを破ることが出来るものがあるとしたら、それはきっと一つだけだ。
この大地に落ちた聖女が、赤子と共に託した一本の剣。
「──力をくれ。俺に、ルーチェを救う力を」
ヴィルジールは目を閉じ、そして語りかけた。この地をひとつの国にまとめ上げ、オヴリヴィオという名を付け、人々を導いた男へと。
聖女の剣を受け取り、聖女が遺した赤子を家族として迎え、その血を繋いでいった初代国王の名を、胸の内で呼ぶ。
「──お前は」
ヴィルジールが次に目を開けた時には、青い光を纏う男が立っていた。
髪は青く、瞳も青い。だが瞬きをひとつした時にはもう、その髪は銀色に染まっている。
男はヴィルジールに微笑みかけながら、右手を差し出してきた。
『──我が子孫よ。力を得る代わりに、何でも差し出せるか』
ヴィルジールは唇を横に引いた。
「何だって構わない。ルーチェの命と引き換えに得るものなど、何もないのだから」
『……その願い、受け取ろう』
ふたりが頷き合うと、ヴィルジールの右手が光り輝き出した。
囁きかけるように呼んで、ヴィルジールは歩き出す。
この世の全てに拒絶しているかのような、分厚い光の壁の向こうにいる、ルーチェと竜の元へ向かって。
聖王ファルシにも大魔法使いのノエルにも敗れなかったこれを破ることが出来るものがあるとしたら、それはきっと一つだけだ。
この大地に落ちた聖女が、赤子と共に託した一本の剣。
「──力をくれ。俺に、ルーチェを救う力を」
ヴィルジールは目を閉じ、そして語りかけた。この地をひとつの国にまとめ上げ、オヴリヴィオという名を付け、人々を導いた男へと。
聖女の剣を受け取り、聖女が遺した赤子を家族として迎え、その血を繋いでいった初代国王の名を、胸の内で呼ぶ。
「──お前は」
ヴィルジールが次に目を開けた時には、青い光を纏う男が立っていた。
髪は青く、瞳も青い。だが瞬きをひとつした時にはもう、その髪は銀色に染まっている。
男はヴィルジールに微笑みかけながら、右手を差し出してきた。
『──我が子孫よ。力を得る代わりに、何でも差し出せるか』
ヴィルジールは唇を横に引いた。
「何だって構わない。ルーチェの命と引き換えに得るものなど、何もないのだから」
『……その願い、受け取ろう』
ふたりが頷き合うと、ヴィルジールの右手が光り輝き出した。


