ルーチェの光で、ノエルの右肩の傷が跡形もなく消えていく。

 ノエルは腕を伸ばしたり曲げたりして動くことを確かめると、ルーチェに「ありがとう」と言って空へと消えた。

 光と光が激突する中に、ノエルの魔法が放たれる。今度はフェニックスだけでなく、青い光を纏う美しい精霊が、自由自在に水を操りながら空を泳いでいた。それに続くように、緑色の光が風を、地面からは土色の光が次々と浮かび上がり、加勢しているようだった。

 セシルに防護服を着せていたエヴァンが、泣きそうな顔で空を見上げながら、うっとりするように息を吐く。

「ノエル様は、伝説の精霊だけでなく、四大精霊も使役することができるのですね……」

「マーズの神童と呼ばれた男だ。そこらの魔法使いとは違う」

 ヴィルジールの視線がルーチェへと戻される。見つめられていることに気づいたルーチェは、今日も綺麗な青色の瞳を見つめ返した。

「……ルーチェ。竜の正体がはじまりの聖王ならば、聖女ソレイユが救って欲しいと言った“あの方”は、あの竜のことではないか?」

「だとしたら、はじまりの聖王は何故竜になってしまったのでしょう」

 ルーチェは唇を噛み締めながら竜を見上げる。

 竜はファルシの言葉に、肯定も否定もしなかった。それが答えなのだとファルシは言っていたが、どうにも引っかかることがある。