亡国の聖女は氷帝に溺愛される

「では、国に帰ったら、ヴィルジールさまが本当は優しくて温かい人だと、人々に触れ回っても良いですか?」

「何を言っているんだ」

「だって、本当のことではありませんか」

 ルーチェの予想通りに、ヴィルジールはすぐにルーチェの方を向いた。深い青の瞳に映るのは、果てしない夜空ではなく、目の前にいるルーチェだけだ。

「私に任せてください」

「……断固拒否する」

 ころりころりと笑い出したルーチェを見て、ヴィルジールも喉を鳴らして微笑った。 

 ヴィルジールの知るルーチェは、控えめで大人しく、朝焼けに咲く花のように微笑う少女だ。

 だが、今のルーチェは──。

(──あの日に見た姿と、似ている)

 今ヴィルジールの目の前にいるルーチェは、城下町に連れて行った時に、孤児院の子供たちに囲まれている時に見た笑顔と同じものだった。

 まるで陽だまりの中で揺れる大輪の花のようなその笑みは、今まで見た中で一番、ルーチェらしいと思える。ほんとうは、そんなふうに笑う少女だったのだ。

 溢れんばかりに笑っていたルーチェだが、不意打ちと言わんばかりにヴィルジールが顔を近づけてきたので、薄らと唇を開いたまま固まった。