亡国の聖女は氷帝に溺愛される

 夜の空の下では、ヴィルジールの銀髪はより一層艶めいて見え、宝石のような青目は月明かりを受けて煌めいている。

 星空とヴィルジールは、とても素敵な組み合わせだ。

「ヴィルジールさまはお星様がよく似合いますね。並んでいると、まるで絵のように美しいです」

「何だそれは」

 ふ、とヴィルジールが微笑う。

 ヴィルジールは星々からルーチェへと目を動かしたが、その時にはもう、ルーチェは子供のように駆け出した後だった。

「ルーチェ?」

「見てください、これを」

 ルーチェを動かしたのは白い花だった。夜でもはっきりと見える雪色のその花の名は、ウィンクルム。ヴィルジールが好きだと言った花だ。

 小高い丘の上で沢山咲いていた中から、ルーチェは一輪だけ手折ると、ヴィルジールに向かって差し出した。

「……ウィンクルムの花か」

 ヴィルジールはルーチェから花を受け取ると、くるりくるりと指先で回しながら、柔らかな表情をした。その横顔を眺めるルーチェは、離宮に植えた花の種たちのことを想った。

 ルーチェがソレイユ宮の庭に花の種を植えた日、離宮は襲撃され、半壊した。ルーチェの手が加えられた花壇は、瓦礫の下敷きになってしまったが、土の一部は城の中央にある庭園に移された。

 運が良ければ芽吹くかもしれないと、セルカが庭師から聞いたそうだ。