顔を上げたルーチェは、花開くように笑っていた。イージスで共に過ごしていた頃も、帝国で顔を合わせた時も、どちらも同じルーチェだが、ノエルにとってはそうではなかったようで──。
「っ……、聖女ッ!!」
ノエルはルーチェの胸に飛び込み、わあっと声を上げて泣き出した。
その姿を見て、ヴィルジールは腕を組みながら溜め息を零す。
「……泣き虫だったのか」
「うるさいなあっ……。アンタに俺の何が分かるんだよ」
「分かろうとも思わないが」
ついでに言うと、分かり合おうとも思わない。そう二の句を紡いだヴィルジールだったが、抱きしめ合う二人を見る目は優しかった。
「ごめんね、ノエル。私のせいで……」
「どうして聖女が謝るの?」
「私のせいだから。私にもっと力があったのなら、ファルシ様は……」
ルーチェは涙を堪えるために口を閉ざした。
全てが起きたあの日のことを思い返すだけで、胸が潰れそうになるのだ。まだ誰にも打ち明けられそうにない。
ノエルはルーチェを元気付けるように、ぽんぽんと肩に優しく触れ、それからとびきりの笑顔を飾った。
「一番近くにいた貴女が、誰よりも辛い想いをしたのはわかってるから。……早く長老に顔を見せてあげて。聖女に会いたがってるんだ」
ルーチェは唇を引き結んで、強く頷いた。


