亡国の聖女は氷帝に溺愛される


「久しぶりね、フェニックス。ノエルの代わりに迎えにきてくれたの?」

 ルーチェが差し出した手に、橙色の嘴が軽く触れる。焔に包まれているというのに、不思議と熱くはない。寧ろ心地いいと感じる微睡むような温度だ。

「あの魔法使いの手下か?」

「ふふ、ヴィルジールさまったら。フェニックスは手下ではなく、ノエルの友達ですよ」

 聖獣だけでなく精霊──それも伝説上の生き物とされているものまでもを友達と呼ぶルーチェに、ヴィルジールはもう驚かなかった。ルーチェらしいとさえ思う。

 フェニックスに続いて、他にも不思議な生き物が現れた。彼らは揃ってルーチェに挨拶をするように何かをしては去っていく。そうしているうちに、城の内部への入り口と思われる大きな扉が開かれ、中から人が現れた。

「──聖女! 氷帝!」

 現れたのはノエルだった。嬉しそうに手を振ってから、二人の元へと駆け寄ってくる。

「久しぶりね、ノエル。元気だった?」

 ルーチェはふわりと笑ってから、胸元で手を重ね合わせながら、祈りを捧げるように頭を下げた。

 ヴィルジールにとっては初めて見る礼法で。けれどもノエルにとっては久しぶりに見たものらしく。

「……記憶、戻ったの……?」

 ノエルは碧色の目をこれでもかというくらいに見開きながら、ほろりと声を落とした。