『──ねぇ、ファルシさま。セイジョって、どうして必要なの?』

 青々と茂る緑の下で、ふたりの子供が肩を並べて座っている。木の枝を手に、細い水路を流るる水を弄るフィオナは、大きな菫色の瞳を隣にいる少年──ファルシへと動かした。

 ファルシは空を覆い隠さん勢いで広がる木々を見つめていたが、すぐにフィオナと目を合わせた。

『国を守るため、かな』

『どうして国を守らなければならないの?』

『それが私たちの責務だから』

『セキムって?』

 ファルシさまは難しい言葉ばかり使うんだから、とフィオナが頬を膨らませる。同じ年頃なのに、いくつも離れているのではないかと疑いたくなるほどに、ファルシは大人びていた。

『果たさなければならないことだよ。聖王である私と、聖女である貴女には、この国のためにやり遂げなければならないことがあるんだ』

『それってなにをするの?』

 小首を傾げるフィオナに、ファルシは何も返せなかった。

 美しい顔に作り笑いを飾り、フィオナの黄金色の髪をそっと撫でる。

『それは──来たる日まで、口にしてはならないんだ。掟を破ると、大いなる闇が国に災いを起こすと謂われているから』

 それはなあに、と問うたフィオナに、ファルシはまた何も返せなかった。