「──無様だな」
恐ろしく冷たい声だ。もう瞼を開けることすら億劫で、顔を見ることは叶わなかったが、その声を聞いて、誰なのかはすぐに分かった。
少女を取り囲んでいる人々が、怯えた声でその名を呟いていた。──なぜここに氷帝が、と。
「アスラン。何故この女が城の外にいる」
「城門を通ったからに決まっているだろう?」
「適当な部屋に押し込んでおけと、命じたはずだが」
アスランは反省の色も見せずに「それは申し訳ございませんでした」と吐くと、怯える人々へと目を移す。予想していた通りの事が起こり、ほくそ笑んでしまいたくなったが、ヴィルジールの前なので押し留めた。
目を閉ざして横たわる少女の頬に、冷たい何かが触れる。それが何かを少女は確かめることが出来なかったが、ヴィルジールのものだということは感じ取れた。
「……聖女、か」
冷たい何かは、頬から首筋へと滑り、鎖骨で止まると離れた。
「こ、皇帝陛下……!その聖女をどうするおつもりですか」
勇気を出して聖女の処遇を尋ねた者を、ヴィルジールは眼差し一つで黙らせると、マントを翻した。
「聖女を城へ」
「──はっ!」
突然ふらりと現れた聖女と、滅多に城から出てこない氷帝を、人々は呆然と見ていることしか出来なかった。
恐ろしく冷たい声だ。もう瞼を開けることすら億劫で、顔を見ることは叶わなかったが、その声を聞いて、誰なのかはすぐに分かった。
少女を取り囲んでいる人々が、怯えた声でその名を呟いていた。──なぜここに氷帝が、と。
「アスラン。何故この女が城の外にいる」
「城門を通ったからに決まっているだろう?」
「適当な部屋に押し込んでおけと、命じたはずだが」
アスランは反省の色も見せずに「それは申し訳ございませんでした」と吐くと、怯える人々へと目を移す。予想していた通りの事が起こり、ほくそ笑んでしまいたくなったが、ヴィルジールの前なので押し留めた。
目を閉ざして横たわる少女の頬に、冷たい何かが触れる。それが何かを少女は確かめることが出来なかったが、ヴィルジールのものだということは感じ取れた。
「……聖女、か」
冷たい何かは、頬から首筋へと滑り、鎖骨で止まると離れた。
「こ、皇帝陛下……!その聖女をどうするおつもりですか」
勇気を出して聖女の処遇を尋ねた者を、ヴィルジールは眼差し一つで黙らせると、マントを翻した。
「聖女を城へ」
「──はっ!」
突然ふらりと現れた聖女と、滅多に城から出てこない氷帝を、人々は呆然と見ていることしか出来なかった。


