亡国の聖女は氷帝に溺愛される

 ヴィルジールはルーチェの頭に手を乗せ、ぽんぽんと優しく叩いた。

「そんな顔をするな。聖王が無事でいることは確かだ。お前が感じる光を頼りに捜し出し、何処へと消えた竜を封じる手立てを考えなければ」

 ルーチェの顔が跳ね上がる。ヴィルジールの言葉が意外だったのか、目を丸くさせていた。
 だがすぐに、その顔には泣きそうな笑みが浮かんだ。

「良いのですか……? 帝国の皇帝であられる、ヴィルジールさまが……」

「何を言っている。俺もあの竜には用がある」

 ヴィルジールはルーチェに触れていた手を下ろし、自分の胸から腹部に掛けて手を動かした。今は跡形もないが、そこには竜に傷をつけられたことがあるのだ。

「いいか、ルーチェ」

 今にも涙を落っことしそうな菫色の瞳が、ヴィルジールへと向けられる。その気持ちを汲み取るように、ヴィルジールはルーチェの右手にそっと触れた。

「お前はもう、このオヴリヴィオ帝国の民だ。民は皇帝が守るべきもの」

「……ヴィルジール、さま」

「だから変なことを考えて、一人で突っ走るようなことだけはするな。何かあったら、必ず頼ると約束しろ」

 一方的に約束を取り付けている自覚はあったが、こうでもしないと、ルーチェが突然消えてしまうような気がして。

 ヴィルジールは思わず手を取って、そう声を掛けずにはいられなかった。