石の道に、はたはたと赤色が落ちる。額の辺りからぬるりとしたものが流れる感触がして、少女はそこに触れる。下ろした手には、鮮血がべっとりと付いていた。

「……ごめん、なさい」

「謝って済むことじゃねえよ!」

「地面に這いつくばって詫びろ!そして死ね!」

 息をするように吐い出た言葉は、彼らの導火線に火を付けてしまったようだ。その瞬間から、彼らが投げるものが石だけではなくなった。

 卵に果物、固い野菜、食器類に木片と、次々と色々な物を投げつけられる。

 少女は目を閉じて堪え、されるがままになっていたが、ついに大きな物で殴られて体勢を崩した。その時に足を挫いてしまったのか、片方の足首に鈍痛が走る。

「死ね!イージスを滅ぼした聖女!」

「いっ……、」

 髪も掴まれ、更なる痛みに顔を顰める。力を振り絞って目を開けると、セルカが綺麗にしてくれた自分の髪が映る。

 光の束を集めたようだと、言ってくれた。降りた瞼の裏側に優しい光が灯り、柔らかい声が流れる。

 しかしそれは、セルカのものではない。一度だけ会ったヴィルジールのものでもない。けれど、懐かしく思える声だ。

 「(──私の聖女)」

 頭の中を流れる優しい声音に、あたたかくて、泣きたくなるような気持ちになる。

(───わたしは)

 私は誰で、何をしてしまったのか。胸の奥から込み上がるものの名を探そうとしたその時、思考を妨げるほどの悪寒を感じて、少女は薄らと目を開けた。

 ──朧げな視界いっぱいに、青色が揺れている。