亡国の聖女は氷帝に溺愛される

「ルーチェ。意識を失ったお前に、聖女ソレイユが残りの力の全てを託していた。これで聖王の居場所が分かるようになるはずだと」

「……聖王の居場所?」

「分からないか?」

 絡め取られた小指に、ぎゅっと力が込められる。その感触と熱に意識がいってしまい、思わず首を左右に振っていた。

「わ、分かりません……」

 ルーチェは逃げるように左手を引っ込め、跳ねるように立ち上がった。

 唇が震えている。肺の辺りにも重苦しさを感じたが、目の奥がじわじわと熱くなっていくのを抑え込むのに必死だった。

「ルーチェ?」

 突然立ち上がったルーチェを見遣るヴィルジールの眼差しは、真摯そのもので。逸らすことも、逃げ出すこともできない。

(わたし……どうして……)

 ルーチェは震える左手に右の手のひらを添えた。

 触れられたところが熱くてたまらない。ただ触れられただけだというのに、そこから伝うように心までもが震えている。

 ヴィルジールが立ち上がって、ルーチェとの距離を一歩詰めた。

「突然触れて悪かった。まだ具合が悪いのか?」

「い、いいえ……違うのですっ……」

 何が違うんだ、とヴィルジールが怪訝そうに眉を顰める。

 ルーチェはヴィルジールから目を逸らすために、ぎゅっと目を閉じたのだが──。