城を出た少女は、まず目に入った人にイージスの民はどこにいるかと尋ねた。

 相手は少女の髪を見るなり、悲鳴に近い声を上げて後退った。それを見かけた者は逃げるように去り、ある者は建物の中に逃げ込んだ。

 瞬く間に人々から避けられ、少女は重い息を漏らした。
 これほどまでに自分の顔と罪を知る者は多いのか、と。

 何処へ向かえばイージスの民に逢えるのか、途方に暮れそうになったその時、少女の背に硬いものが投げつけられた。

 足元に転がったそれは、小さな石だった。辺りを見回すと、小さな男の子が泣き出しそうな顔で少女を見ていた。

「どうして、聖女様が生きているの」

「……わたしは」

 男の子の声は震え、濡れていたような気もして。その声からは深い悲しみを感じた。
 やはり自分は、聖女というとんでもないやつだったのだ。

「おい、聖女が生きているぞッ……!」

 男の子の父親らしき男が、憎々しい顔で声を上げる。すると、四方八方から人が現れては自分を囲い、怒りや悲しみの声とともに石をぶつけてきた。

「お前のせいで聖王様がッ」

「お母さんを返して!」

「お前のせいで、一瞬で焼け野原だっ……!」

 終わりのない罵声と暴力は、いつしか「死んで詫びろ」という声へと変わっていった。