お椀の中に入っているのはお粥のようだ。スプーンでひと掬いすると、薬の匂いが濃くなった。体に良い薬草の類が入っているのだろうか。まじまじと見つめているうちに、白くて荒い粒の中に花びらのようなものが浮かんでいるのを見つけた。

「……これは花でしょうか」

「ああ。ウィンクルムだ」

 ルーチェは目を丸くさせながら、ヴィルジールの顔を見上げる。

「食べられるお花、なのですか?」

「ああ。市井ではよく食べられている。根まで食べることができて、栄養価も高い。……今回はさすがに花弁しか入れていないが」

 ウィンクルムはヴィルジールが好きだと言っていた花だ。強い花だというのは庭師から聞いていたが、食用でもあること、栄養があることは初めて知った。

「い、いただきます……」

 恐る恐る一口食べてみると、薬の匂いがしたわりには苦味はなく、ほどよい塩気と甘みがあった。食べやすいよう味付けされているのか、ぱくぱくと食べられる。

「とても美味しいです……!もしかして、ヴィルジールさまが作られたのですか?」

「俺は花を渡しただけで、調理したのは料理人だ」

 お茶を淹れるくらいしか出来ない、とヴィルジールは苦笑混じりに言うと、ルーチェと向き直った。