白い空を、花弁が泳いでいる。
見渡す限り真っさらな空には、色とりどりの花弁が浮いていた。風は吹いていないというのに、不思議なものだ。
ひとつくらい掴めるだろうかと思い、手を伸ばしてみる。だがこの手が掴んだのは花弁ではなく、誰かの手だった。
ルーチェは誰かと、手を繋いでいる。
(──誰?)
ルーチェは瞬きひとつせずに、自分の手を見つめた。そこには何もいないように見えるが、確かに誰かの手の感触がある。
姿が見えない誰かと手を繋いだまま、ルーチェは辺りを見回した。
雪色の空の下では、瑞々しい緑が広がっていた。間を流れる水は、光を受けて神秘的な光を放っている。その奥に巨大な建物が聳えているのを見つけ、ルーチェは目を瞬いた。
(──知っている、気がする)
建物を囲う無数の白い柱。何かを描くように張り巡らされている水路。建物の最上階から滝のように流れ落ちる青い水。
目に映る全てを、ルーチェは知っている。
(もしかして、ここは)
引き寄せられるように足を動かしたその時、ルーチェの目の前が光り出した。
膨大に膨れ上がった光の中から、人影が浮かび上がる。眩い光を放ちながら鮮明になっていくその姿を見て、ルーチェは目を大きく見開いていった。
いつかの日に、光で満たされた空間で会った青年が、目の前に佇んでいる。
黄金色の髪は風に揺蕩い、ぱっちりと開かれた瞳は碧く、強い意志を宿している。
『──目を醒ましておくれ。私の聖女』
柔らかな声が、ルーチェの鼓膜を揺らした。
「……あな、たは……」
誰ですか、と奏でようとした声は、繋いでいた手が離れたことにより途切れた。
身体が急降下していく。景色は白い空から、闇一色へと変わった。不安で堪らなかったが、ルーチェは空へと手を伸ばし続けた。
見渡す限り真っさらな空には、色とりどりの花弁が浮いていた。風は吹いていないというのに、不思議なものだ。
ひとつくらい掴めるだろうかと思い、手を伸ばしてみる。だがこの手が掴んだのは花弁ではなく、誰かの手だった。
ルーチェは誰かと、手を繋いでいる。
(──誰?)
ルーチェは瞬きひとつせずに、自分の手を見つめた。そこには何もいないように見えるが、確かに誰かの手の感触がある。
姿が見えない誰かと手を繋いだまま、ルーチェは辺りを見回した。
雪色の空の下では、瑞々しい緑が広がっていた。間を流れる水は、光を受けて神秘的な光を放っている。その奥に巨大な建物が聳えているのを見つけ、ルーチェは目を瞬いた。
(──知っている、気がする)
建物を囲う無数の白い柱。何かを描くように張り巡らされている水路。建物の最上階から滝のように流れ落ちる青い水。
目に映る全てを、ルーチェは知っている。
(もしかして、ここは)
引き寄せられるように足を動かしたその時、ルーチェの目の前が光り出した。
膨大に膨れ上がった光の中から、人影が浮かび上がる。眩い光を放ちながら鮮明になっていくその姿を見て、ルーチェは目を大きく見開いていった。
いつかの日に、光で満たされた空間で会った青年が、目の前に佇んでいる。
黄金色の髪は風に揺蕩い、ぱっちりと開かれた瞳は碧く、強い意志を宿している。
『──目を醒ましておくれ。私の聖女』
柔らかな声が、ルーチェの鼓膜を揺らした。
「……あな、たは……」
誰ですか、と奏でようとした声は、繋いでいた手が離れたことにより途切れた。
身体が急降下していく。景色は白い空から、闇一色へと変わった。不安で堪らなかったが、ルーチェは空へと手を伸ばし続けた。


