自分のことを知っていけば、記憶を取り戻すきっかけになるのではないかと。
だからこの国の景色を見せたのだ。ふとした瞬間に、祖国の風景を思い出すのではないかと。好きな味を知ろうとしたのも、ドレスを選んだのも、花束を贈ったのも、彼女が自分自身を取り戻すために必要なことだったと思っている。
必要だから与えたのに、ルーチェはいつも笑っていた。それが不思議で、だけど悪いことではなくて。
閉じたまぶたの裏側で、記憶の中のルーチェの姿を浮かべようとしたその時。
ちくりと、刺すような痛みが胸の辺りに走った。
(──…なんだ?)
ヴィルジールは目を開け、左胸に右手を当てた。
だがもう、そこに痛みはない。心の臓が忙しなく動く音が、指先から伝わってくるだけだ。
原因は寝不足か、疲労感か。両方だろうと考えたヴィルジールは、ルーチェに背を向けて歩き出した。
調べ物ついでに居座っていたが、そろそろ戻らなければエヴァンが騒いで煩くなるだろう。
(──ルーチェ)
扉の向こうへ足を踏み出す前に、ヴィルジールはルーチェを振り返った。
目が覚めたら、何の話をして、何を食べさせようかと。そう思いながら。
だからこの国の景色を見せたのだ。ふとした瞬間に、祖国の風景を思い出すのではないかと。好きな味を知ろうとしたのも、ドレスを選んだのも、花束を贈ったのも、彼女が自分自身を取り戻すために必要なことだったと思っている。
必要だから与えたのに、ルーチェはいつも笑っていた。それが不思議で、だけど悪いことではなくて。
閉じたまぶたの裏側で、記憶の中のルーチェの姿を浮かべようとしたその時。
ちくりと、刺すような痛みが胸の辺りに走った。
(──…なんだ?)
ヴィルジールは目を開け、左胸に右手を当てた。
だがもう、そこに痛みはない。心の臓が忙しなく動く音が、指先から伝わってくるだけだ。
原因は寝不足か、疲労感か。両方だろうと考えたヴィルジールは、ルーチェに背を向けて歩き出した。
調べ物ついでに居座っていたが、そろそろ戻らなければエヴァンが騒いで煩くなるだろう。
(──ルーチェ)
扉の向こうへ足を踏み出す前に、ヴィルジールはルーチェを振り返った。
目が覚めたら、何の話をして、何を食べさせようかと。そう思いながら。


