亡国の聖女は氷帝に溺愛される

 ノエルは本を戻し、ルーチェに近づいた。
 レイチェルに襲撃された夜から三日が経つが、ルーチェは未だに眠っている。長い夢でも見ているのだろうか。
 そっと手の甲に触れてみると、驚くほど冷たかった。

「目を覚ましたら、聖王様を捜しに行かれるのかな」
「さあな」
「さあなって……」

 抑揚のない声で答えたヴィルジールを、ノエルは睨めつけるように見る。

 目を覚ましたルーチェがどこに行こうと、何をしようと、どうでもいいのだろうか。──だとしたら、三日も付き添っているのは何故なのか。

「……ねぇ。僕をこの国に呼んだのって、結局は聖女のためだよね?」

 ノエルはルーチェの手に触れながら、ヴィルジールに問いかけた。

 ヴィルジールは手元の本から顔を上げ、ノエルと目を合わせる。相も変わらず無表情で、何を考えているのかは窺えなかったが、それが答えのような気がした。

「……竜が襲撃した日。ルーチェから発せられた光が空を覆い、それ以来魔物が出没しなくなった。調査に出向いた神官によると、破魔の結界が国全体に張られていると」 

「それで?」

「その結界を調べてもらうために、マーズの長に大魔法使いを貸せと言っただけだが?」

「……はぁ」

 ノエルはさらさらの髪をくしゃりと掻き上げた。