亡国の聖女は氷帝に溺愛される

『王の子よ。この地の王に託した、聖女の剣を捜しなさい』

「聖女の剣?」

 ヴィルジールは顔を上げ、そして瞳を大きく動かした。ソレイユの身体が青い光を放ちながら、透けている。

『我が半身が生み出したあの剣ならば、聖者さえも滅することができます』

 ぶわりと吹いた風が、ヴィルジールとソレイユの間を吹き抜ける。

『但し、その代償として何を失うかは分かりませんが、相手の魂ごと消滅させることができます』

 聖女の剣も聖者も初めて聞く言葉だ。それがヴィルジールと何の関係があるのかは分からなかったが、剣には思い当たることがあった。

 それは、ここ数日見ていた夢のことだ。

 その夢とは、ひとりの少年が見ていた光景が映し出されていた。夢の中では白銀色の髪の女性が現れ、少年に一本の剣と包みを差し出してきた。それを少年が受け取ると、女性の髪は黒色に変わり、光の粉となって消えてしまう。

 よい夢なのか、悪い夢なのか。何を伝えようとしていたのか分からない夢だったが、どうやらあの女性が今目の前にいるソレイユのようだ。 

 ソレイユは枯れる花のように笑うと、ヴィルジールの右手に触れた。

『王の子よ。あの日の約束を、必ず』

 あの日の約束とは、いつの日のことだろうか。あの夢の出来事は、一体何百年前のことなのだろうか。なぜ彼女は、ヴィルジールを王の子と呼ぶのか。

 謎は深まるばかりだが、右手に熱を灯し続ける存在に会うために、ヴィルジールは瞼を下ろした。