亡国の聖女は氷帝に溺愛される

(──この、熱は)

 右手を見ると、淡い光を纏っていた。あたたかくて優しいその光を、ヴィルジールは知っている。

 光は右手を伝って全身へと広がっていき、ヴィルジールを包み込んでいった。

 苦しかった呼吸が楽になった。身体から力を抜くと、目に映る世界が翼を広げるように光を放ち、鮮明になっていく。

 ひときわ強い光を感じて、反射的に目を閉じ──そして開けた時。

 ヴィルジールの目の前には、艶やかな黒髪を靡かせる美しい女性が佇んでいた。

『王の子よ。わたくしの声が聞こえますか?』

「……その王の子とやらが誰を指しているのかは分からないが、お前の声は聞こえている」

 ヴィルジールは自由になった足を動かし、女性との距離を一歩詰めた。

『それはようございました』

 とても美しい女性だ。澄んだ菫色の瞳に、雪のように白い肌、赤い花のような唇。今この場にエヴァンがいたら、間違いなく跪いて花束を差し出しているだろう。

「お前は誰なんだ?」

『我が名はソレイユ。遥か昔、この地の王と盟約を交わした者です』

 ヴィルジールの問いかけに、謎の女性──ソレイユは、赤い唇を綻ばせながら答えた。