◆
からんころん、と。懐かしい音が聞こえる。だがそれが何の音だったのかは思い出せない。ただ漠然と、懐かしいという思いばかりが溢れている。
ふいに、自分を呼ぶ声が聞こえたような気がして、ヴィルジールは目を開けた。
(──どういうことだ? ここは?)
何もない世界だ。触れられるものも、目に映るものも、全てが無。だが何かがヴィルジールを捕らえ、奥深くに引き摺り込もうとしている。それだけは分かっていた。
一歩先すら見渡せないほど真っ暗な闇の中、水の中に潜っているような声が繰り返され、ヴィルジールの身体に蔦のように絡みついてくる。気を抜いたら落っこちてしまいそうだ。
この夢から抜け出すにはどうしたらいいのか。絡みついてくる何かを振り払いながら、必死に声を上げる。
だがいくら動いても、目を凝らしても、そこは無でしかなく、ヴィルジールはさらに奥へ奥へと引き摺り込まれていった。
その時、声が聞こえた。ヴィルジールの名を呼ぶ声が。
──ヴィルジールさま。
ひとひらの雪のように儚げな声が、ヴィルジールを呼んでいる。
(──その、声は……)
暗闇の中、ヴィルジールは耳を澄ませた。花を揺らす風のような声を、一音も聞き逃さないように。
──ヴィルジールさま。
(……何故、呼ぶんだ)
自分を呼ぶ声は今も聞こえている。それが誰の声なのかも分かっている。だけど、何故呼んでいるのかが分からない。
だが、切々と響くその声に耳を傾けているうちに、右手があたたかいことに気づいた。
からんころん、と。懐かしい音が聞こえる。だがそれが何の音だったのかは思い出せない。ただ漠然と、懐かしいという思いばかりが溢れている。
ふいに、自分を呼ぶ声が聞こえたような気がして、ヴィルジールは目を開けた。
(──どういうことだ? ここは?)
何もない世界だ。触れられるものも、目に映るものも、全てが無。だが何かがヴィルジールを捕らえ、奥深くに引き摺り込もうとしている。それだけは分かっていた。
一歩先すら見渡せないほど真っ暗な闇の中、水の中に潜っているような声が繰り返され、ヴィルジールの身体に蔦のように絡みついてくる。気を抜いたら落っこちてしまいそうだ。
この夢から抜け出すにはどうしたらいいのか。絡みついてくる何かを振り払いながら、必死に声を上げる。
だがいくら動いても、目を凝らしても、そこは無でしかなく、ヴィルジールはさらに奥へ奥へと引き摺り込まれていった。
その時、声が聞こえた。ヴィルジールの名を呼ぶ声が。
──ヴィルジールさま。
ひとひらの雪のように儚げな声が、ヴィルジールを呼んでいる。
(──その、声は……)
暗闇の中、ヴィルジールは耳を澄ませた。花を揺らす風のような声を、一音も聞き逃さないように。
──ヴィルジールさま。
(……何故、呼ぶんだ)
自分を呼ぶ声は今も聞こえている。それが誰の声なのかも分かっている。だけど、何故呼んでいるのかが分からない。
だが、切々と響くその声に耳を傾けているうちに、右手があたたかいことに気づいた。


