亡国の聖女は氷帝に溺愛される

「エヴァン殿。公爵がお連れになった聖女様は、今はどちらに?」

「彼女は城の客間です。適当な部屋に案内させましたよ」

「適当って……」

「あのまま追い返してもよかったのですが、気になることがありましてね。陛下も同じことを思っていらっしゃると思ったので、監視ついでに引き留めたのです」

 一体何の話をしているのだろうか。公爵が連れてきた聖女とは、セシルが訊いてきたことに関係がありそうだ。

 だがルーチェの前では言いづらいのか、あるいは気遣ってのことなのか、その話題はもう出てこなくなった。

「ジルの具合はどうなんだ?」

 アスランが腕を組みながら、ヴィルジールの寝室の方を見遣る。素っ気ない口調だったが、心配で仕方ないという顔をしている。

「今は聖……ルーチェ様のお陰で、眠っておられます。ここ最近、陛下は夢見が悪いと仰っていて、仕事も捗らないようでした」

「先ほど会った聖女様が近づいてきた時から、具合を悪そうにされていましたしね」

「つまり原因はあの女ということか」

「イージス神聖王国の聖女だと言っていましたが、こちらにはルーチェ様がいます。ルーチェ様がイージスの聖女であったことは、大魔法使いであるノエル様が証言なされた」

「ならば大魔法使いをここに呼んで、あの女を追っ払ってもらえばいいじゃないか。あの魔法使いは今どこにいるんだ?」

「もう間もなく到着されるはずです」

 三人の会話を聞きながら、ルーチェは頭の中で情報を整理する。

 ヴィルジールはここ最近、夢見が悪いせいで不調だった。そんな最中に、イージス神聖王国の聖女を名乗る女性を、公爵が連れてきたという。

 だがイージスの聖女がルーチェであることは、稀代の大魔法使い・ノエルが証言している。

 ──一体、何が起きているのだろうか?