亡国の聖女は氷帝に溺愛される

 私室に到着すると、ヴィルジールはベッドに寝かされた。先ほどの男性が医者を呼びに部屋を出て行くと、室内にふたりきりになった。

 ベッドの上で仰向けに寝転ぶヴィルジールは、苦しげに呼吸をしている。そっと額に触れてみたが、熱はなさそうだ。

 ルーチェは部屋の隅にあった椅子を拝借し、ヴィルジールの傍に座った。そして、右手を握る。

「……ルーチェ?」

 薄らと開かれた目は潤んでいた。視界が定まっていないのか、ぼんやりと遠くを見ているようだ。

 ルーチェは安心させるように微笑んでから、両手で包むようにして握ったヴィルジールの右手に、自分の額を当てた。

(──触れて、想って。そして、光を求める)

 今のルーチェに、出来るかは分からない。だけど、奇跡を起こした日のことを思い出しながら、ノエルから教わったことを守れば、出来る気がした。

 聖なる光の力。それは魔力のないルーチェでも出来るという。その力で、ヴィルジールを癒すことができたのなら。

 ルーチェは瞼を下ろし、胸の内で願い事を告げながら、祈りを捧げた。

(ヴィルジールさまの痛みが和らぎますように。今夜はゆっくりと、眠れますように)

 ノエルがあたたかくて優しい気持ちをくれたように、ルーチェも伝えたいのだ。泣きたくなるような、あの優しい光を。
 

 ──どれくらいの間、そうしていたのか。
 扉が閉まる音で目を開けると、ヴィルジールは穏やかな顔で眠っていた。