君の好きな人になりたかっただけ

「…え?どうして?」

「…もう一つ、花楓にプレゼントがあるんだけど」


そう言って直樹が差し出してきたのは、青い花が三つ真ん中に挟まれている透明なしおりだった。


「わ…綺麗。本に挟むしおり?」

「そう。俺が作ったんだ」

「え、直樹がこれを?」

「透明なラミネートフィルムの間に花びらを挟んで簡単に作ることができるんだ。花楓、小説よく読むだろ?日常使いできるかなって思って」

「ありがとう、たくさん使う!この青いお花、すごく可愛いけどなんて名前なの?初めて見た」

「勿忘草っていう花でね、花楓に贈る花言葉にぴったりだと思ってその花にしたんだ」

「花言葉?」

「花に込められている意味みたいなもの。勿忘草の花言葉は、“真実の愛”と“私を忘れないで”。花楓が俺のことを忘れないように。そう願いを込めたんだ」


しおりの勿忘草に視線を向ける。

こんな小さな花に、直樹は大きくて深い意味を込めてくれたんだ。

直樹が私を想って選んでくれた花…。