目を覚ますと、見知らぬ天井が目に飛び込んできた。

窓から差し込む光が眩しくて、思わず目を細める。

ここは、どこだろう…？


「…花楓(かえで)？」


光を遮るようにして、誰かが顔を覗き込んできた。

彼の目にかかるくらい少し長い黒の前髪が、窓から入ってきた風にさらわれて綺麗なアーモンド型の瞳があらわになる。

綺麗な男の子だな、と思った。


「よかった…。目が覚めたんだな。今、先生呼んでくるから」


いなくなろうとする彼の腕を、なぜか私は反射的に掴んでいた。


「花楓？」

「…あの、あなたは、誰ですか？」


出た声はすごく掠れていて、驚いたように目を見開く男の子に聞きたいことはたくさんあるのにうまく言葉が出てこなかった。


「…俺のことがわからないのか？」


思い出そうとしてみるものの、包帯を巻かれた頭が痛むだけで何一つ思い出すことができなかった。