球技大会がついに明日に迫っていた。

俺はある目的のために、河川敷の下にあるバスケゴールを使って柄でもないバスケの練習なんかしちゃってる。


「あ、いたいた。本当にこんなとこでバスケの練習してんのな」


幼稚園からずっと一緒の幼なじみである佐原光輝(こうき)が、片手を上げながら土手を降りてきた。


「なんの用だよ?」

「いや別に?最近付き合い悪いから何してんのって聞いたらここでバスケしてるって零が言ったんじゃん。だから本当なのか見にきただけ。マジで練習してんだな。おまえなら練習しなくたって活躍しまくるに違いないのに」

「まあ。今回は負けらんねぇから」

「まーた糸瀬さん絡みか。好きな子に必死にちょっかい出しておまえはまるで小学生みたいだな」


ケラケラと笑っている光輝に「うるせ」と返しながら、持ってきていたタオルで汗を拭う。


糸瀬綾乃。腰まである黒髪はしっかりと手入れがされていることがわかるほどサラサラで、近くにいるだけで花のようないい香りがする。

猫のような切れ長の瞳にはじっと見つめられるだけで身動きが取れなくなってしまうほどの目力を持ち合わせていてパーツ一つ一つが綺麗な学年一の美人。

頭もよくスポーツもできて、そんな自分に自信があるところも彼女の魅力の一つだ。

馬鹿みたいに口を開けて笑うタイプではなく、クールで大人びている雰囲気に近づけない生徒も何人かいるが、それでも目を引くほどの美を纏っていて高嶺の花としてそれはそれは男子からの人気も高い。

糸瀬のことを好きな男子のうちの一人が俺である。