「好き」って言って

「あ、こ、これ、は…っ、目にゴミが入っただけ!それもかなり大きめの!」

「大丈夫か?なんだ、傘が見つけられなくて泣いてんのかと思ったよ」


鋭い黒瀬に、そんなわけないと適当に誤魔化せばよかった。

かっと顔が熱くなり、思わず顔を背けてしまった。

こんなの、そうだと言っているようなものじゃないか。


「…え、まじ?」

「ち、違…っ。今日は、たまたま朝からいいことが…なくて」


だからなんだよと笑われるに決まっているのに、どうして私はこんなこと黒瀬に言ってしまったの…!

黒瀬と話すのは今が初めてだけど、彼も私と同じで目立つ人間でいつも人の中心にいる。

そんな人にこんなことを言って、明日にでも言いふらされたらどうしよう…。


「雨の日って、そういうこと多いよな。俺なんて朝小降りだったからそのうち止むだろって思って傘すら持ってきてなくて、そしたらこんなどしゃ降りなんだもん。ついてねぇよ」


それは、ついていないと言うよりはただ単に黒瀬がだらしないだけなんじゃ…。


「あ、今、俺がだらしないだけだろ、とか思ってんだろ!」

「…ふっ、あはは!だってそうなんだもん」