「好き」って言って

これが、糸瀬に対する罪滅ぼしのつもりではないけど、なんとなく今は一人でいたい気分だった。

焼却炉にゴミ袋を捨て終わった頃には、雨は本格的に降り出していてまるで俺の心をそのまま写したかのような天気だった。

廊下を歩きながら、この天気の中どうやって帰ろうかとぼんやり考えているとふとポケットに入れていたスマホが震えた。


「…もしもし、姉貴?」


電話の相手は姉貴からだった。


「零、あんた傘持ってんのー?」

「いや、持ってねぇけど」

「仕事がちょうど終わって近くいるから、この優しいお姉様が迎えに行ってあげるわよ。校門の前に車停めて待ってんねー」

「おーさんきゅ」


電話を切ってちょうど着いた教室で荷物を取って靴箱に行くと、見慣れた黒髪がふわりと視界の端で揺れたのが見えた。


「…糸瀬?」


靴箱にもたれかかるようにして外を眺めていた糸瀬の顔を横からひょこっと覗く。


「…あ、ゴミ捨ては終わったの?」

「ああ。こんなとこで何してんの?」