「好き」って言って

試合前に柄にもなく本気で「頑張れ」なんて応援したのが悪かったのか?

珍しく不安そうな顔をしている糸瀬を見ていたら、いても経ってもいられなくて勝手に言葉が出てたんだよな…。

それとも、あの先輩面して糸瀬を傷つけてた奴らを殺意を込めて睨みつけたのを見られたか?


何が理由にしても結局俺、詰んでね…?

もう人生終了じゃん。


はあと深くため息をついたところで、見覚えのあるサラサラな黒髪が家の前を通り過ぎて行った。


「…糸瀬!?」


ついに幻覚まで見てしまったのではないかと思いながらも慌てて追いかけて腕を掴むと、しっかりと触れることができた。


「…え、黒瀬?」

「こんなところで何してんだよ?おまえんち、この辺じゃないだろ?」


って、なんで知ってるんだろうって顔してる!

光輝が糸瀬と家が近いみたいでその話を聞いていたから知っていたけど、糸瀬からしたらこれってキモイとか思われる…?


「光輝が!糸瀬の家の近くに住んでるみたいで、見かけたことがあるって言ってたんだ…」


必死に言い訳をしながら、どうして引き止めてしまったのだろうと後悔する。