「零、あんた何してんの?蝉の抜け殻ごっこ?」


リビングのソファの片隅で体育座りをしてぼーとしている俺に、五つ年上の姉貴が怪訝そうに顔を覗き込んできた。


「…放っておいてくれ」

「何よ、お姉さまに向かってその口の聞き方は。朝からカビの生えたキノコみたいにジメジメしちゃって。学校遅刻するよ?」

「…学校なんて行きたくない」


球技大会が終わり、土日を挟んで月曜日の今日。

糸瀬から完璧に嫌われた俺は学校に行くモチベなんて何もなかった。


「なあ姉貴…。世界っていつ終わるんだろうな…」

「は…?バカなこと言ってないで早く学校行け」


鞄と一緒に玄関の外に放り出され、しばらくその場に座り込んだままぼーと糸瀬のことを考える。

私に優しくしないで、って、そういうことだよな…。

きっと糸瀬は俺が思ってたよりも俺のことが嫌いなんだ…。

じゃないと普通、優しくしないでなんて言わねぇよな?

優しくされて気持ち悪いとか、そもそも嫌いだから関わらないでほしいってずっと思ってたのかなー…。

姉貴は優しい男はモテるって言ってたけど、嫌いな相手から優しくされても不快でしかないもんな。