「好き」って言って

「いや…なんか、初めて見る笑顔だったから。糸瀬さんってそんな風にも笑えるんだね」


クラスメイトの言葉で、ふと自分がいつもの完璧に作った笑顔ではなく素で微笑んでいたことに気づく。


「よーし、先輩たちよりも応援するぞ!」

「勝て勝て糸瀬チーム!」


士気が上がったかのように大盛り上がりを見せるクラスメイトたちに、夏芽と顔を合わせて笑う。

勝って黒瀬にも本心を伝えられたらいいな…。

少しだけ素直な今の私なら、それができる気がした。


「絶対負けないから」


挨拶が終わりそれぞれ配置につく際に、私の横をさっきの先輩がわざとぶつかるようにして通り過ぎていった。

卑怯な手を使ってここまで勝ち進んできた彼女たちだから、決勝もきっと何かしら仕掛けてくるに違いない。

こっちは勝負がかかっていてそれどころじゃないっていうのに、一体何をされるのだろう…。


「糸瀬」


不安になり汗が首を伝った時だった。

応援席の方から、黒瀬の声だけが真っ直ぐに私の耳に届いてきた。