球技大会当日。

昨日はこっそり放課後に練習をしていたところを黒瀬に見られなんとか誤魔化したけど、それも今日勝てなければなんの意味もない。


「綾乃がいるからあっという間に決勝だね」


現在の時点で三試合が終了し、私たちのクラスは順調に勝ち進んでいた。

それは男子も同じく。


「糸瀬。今何点?」


掲示板に貼られた結果表を夏芽と眺めていると、くいっと低めツインテールにした髪の毛を黒瀬が引っ張ってきた。


「…26点だけど。あんたは?」

「27点」


たったの一点差でもう勝ったかのようににやりと笑う黒瀬からぷいっと顔を背ける。

こんな時に素直に「すごい」と褒めてあげられる女子だったらどんなによかっただろう…。

また泣きそうになるのをぐっと唇を噛み締めながら我慢し、「残りの一試合が楽しみ」と苦し紛れの捨て台詞を吐きその場を後にする。


「負けた方が勝った方の言うことを聞くんだっけ?」